Vol.2 ファーストラブ

ファーストラブ 島本理生

「女の子のまわりにはいつだって偽物の神様がたくさんいるから。」

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概要:「動機はそちらで見つけてください」父親を殺したアナウンサー志望の美人大学生・聖山環奈が警察に言った言葉だった。このセンセーショナルな事件を本にするため、取材を始める臨床心理士の由紀。国選弁護士として事件の究明に乗り出す迦葉。1つの事件を通して2人の過去・トラウマが次第に浮彫になっていく。

 

意見:ファーストラブと聞いて同士諸君が思い浮かべるのは何だろうか?

私の場合は、宇多田ヒカル女史の名曲である。


宇多田ヒカル - First Love

「最後のキスはタバコのflavorがした」という歌詞を当時10代の宇多田女史が考えたのは今となっては逸話である。この曲を聴くと私の初恋もタバコのflavorのキスで幕を閉じた気がしてくるから不思議だ。

しかし、本書「ファーストラブ」で父親を殺した大学生の初恋はタバコのflavorよりも“きな臭さ”が鼻につく。

 

端的に言うとこの小説は、「親ガチャ」「家庭内での性的搾取」が2軸になって話が展開していくと私は感じている。(というか、ほぼ同義)

同士諸君は親ガチャという言葉を耳にしたことがあるだろうか?

SNS、特にTwitter界隈で目にすることが多いこの単語。最初に考えた人間は天才だな。

「良くも悪くも子は親を選べない」の概念を一言で表した言葉である。(幸せの青い鳥派の皆は納得しないだろうが、、、)

日本社会(だけなのか、世界的にそうなのか分からないが)では親の普通が子の基準に設定されることが一般的なのかなと思う。(おふくろの味とか代表的な例だよね)

傍から見たら異常なことも、家庭内で正常なら子供には正常と認識されてしまう。

一種の呪いがかけられてしまう。

 

メインキャラクター3人(由紀・迦葉・環奈)は上記の概念でいうと完全に呪われている。

人間誰しも親子間の確執は多かれ少なかれあると思うが、幼少期に異常を強要された場合の溝を埋めることは非常に難しい。

また、子供時代に子供であることを許されなかった場合も非常に深刻である。

この呪いを解くために奮闘するが、特に女性の場合は本物の神様が手助けしてくれるとは限らない。

男性の場合も同様かもしれないが、肌感ではやはり女性のほうが助けを求める人間を慎重に吟味する必要があるのかな。

極端な例だが、ヒッチハイクとかも男性のほうが車を止める敷居が低いように感じる。(偏見だったらごめんなさい。)

結論から言うと、環奈が伸ばした手を握ったのは偽物の神様だった。

でも、神様に満足してもらい助けてもらうためにはそれなりの犠牲を払わなきゃいけない。犠牲が何に当たるのか、子供らしく幼少期を過ごすことが許されなかった環奈には分かっていた。

母親に相談したが、もちろん取り合って貰えない。逆に色目を使ったお前が悪いと言われる始末である。

幸せな家庭の定義とは何なのだろうか?

お金がある家庭は幸せなのだろうか?

愛があればお金なんて無くても幸せなのだろうか?

永遠のテーマである。

個人的には異常な例を除いて、お金の余裕=心の余裕に繋がり愛情を他人に与える余裕が生まれるのかなと思ったり。

難しい問題である。

 

さて、ここからが2つ目の軸「家庭内での性的搾取」である。文字にするのもおぞましいアタオカwordである。

有名なのは尊属殺重罰事件だね。大学の憲法の授業でこの胸糞悪い事件を教わったのは今でも記憶に新しい。(一応、リンク貼っとくよ)

「父殺しの女性」を救った日本初の法令違憲判決:日経ビジネス電子版

家庭内でこのような異常が起きている場合、母親は保身のためにネグレクト状態がデフォになるのだと思う。そして、被害者の方は脅威から身を守るためご機嫌取りに徹する。

環奈もご機嫌取りに徹した。成人男性が怖いので肉体関係を断ることはなかった。母親には色目を使ったお前が悪いと責められた。八方ふさがりである。

彼女の場合は上記実事件のように、直接父親から被害を受けた訳ではないが幼少期に感じた性的不快感は大人になっても深く根付いている。

 

これは脱線かもしれないが、自分より何十歳も若い人間を恋愛対象にできる神経が個人的によく分からなかったりする。

最近(と言っても少し前だが)だと、有名なアイドルが高校生と飲酒した事件もよく理解できない。

私が友達とバーでお酒を飲んでいて、突然マスターが気を利かせて面識のない自分より幾分若い異性を呼んだら確実に萎える。

だいたい、気を利かせて若い女の子を呼ぶ神経もよく分からない。放っておいてくれと言える人間になりたい。

 

また、ワイドショーを見ていたら人気youtuberが未成年に修行と称して裸の写真を送らせていたという身の毛もよだつ事件が起きていた。

 

何の修行だよ?この一言に尽きる。

 

しかも、家庭もあるというのだから驚きだ。しかるべき制裁を受けてほしい。

(性犯罪の日米差という興味深い記事を見つけたので共有しておく。)

アメリカの性犯罪対策は日本とどう違う?│公務員総研

 

ネットが我々の生活に入り込んできてから、親の監視範囲が広がり難易度が増す一方である。

子供をこういった頭のおかしい輩から守るためには、ある程度の制限が必要かもしれないが制限をかけすぎても悪影響なんですよね。

事実、私の周りの家庭内ルールが厳しかった人間はどこかで弾けている。

子供に対する制限の範囲も非常に難しい問題である。

 

と脱線してしまい申し訳ない。やはり、この手の問題になると思うことがあるので熱くなってしまう。

 

この小説を読み終わった今、私の頭では1人のK-POPアイドルが笑っている。

彼女は自ら命を絶ってしまったが、死後に出てくる家庭内の問題や男性関係など未だに話題になることがしばしばである。

特に、命を絶った後に掲示板に書かれて数々の気持ち悪く胸くその悪い性的な文章の数々は忘れたくても忘れられない。

どうしたら、こんな気持ち悪いアイディアが出てくるの?と人格を疑ってしまう言葉がそこかしこに溢れていた。

正直、この話を出そうか迷った。

というのも、私は未だに彼女の死を受け入れられていない。

環奈の生きざまが彼女と若干リンクしてしまい、とても苦しくなった。

 

 

追記:ファーストラブも映画化されていたよね。(え?窪塚洋介出てるの!?!)

firstlove-movie.jp

二回目にして重たい内容だったので、次回はポップでキュートでハッピーな記事を書きたい。

 

問題提起:なぜ、本書のタイトルが「ファーストラブ」なのか未だに考えている。内容を見ていくと初恋の比重はそこまで重くないように感じたが、、、